追加融資とリスケを同じ資金繰り表で比較する方法
2026.08.24
目次
結論:借りられるかではなく、6か月後に現金が残るかで比べる
追加融資を断られそうな会社が最初に見るべき数字は、「金融機関が貸してくれるか」ではありません。
先に見るのは、追加融資を受けた場合とリスケをした場合で、月別の現預金残高がどう変わるかです。もっと厳密に言えば、6か月後に現金が残り、営業資金収支の改善が間に合うかを見ます。
追加融資は、実行された月の現金を増やします。しかし、営業資金収支が赤字のままなら、その現金は毎月減ります。返済が始まれば、また資金流出が増えます。
リスケは、新しい現金を増やしません。その代わり、既存借入の元金返済を一時的に軽くし、改善策を実行する時間を作ります。だから、追加融資とリスケは「どちらが良いか」ではなく、同じ資金繰り表に入れて比較する必要があります。
追加融資とリスケを別々に考えると判断を誤る
資金繰りが苦しい会社ほど、追加融資を先に考えます。口座残高が増えれば、目の前の支払いはできます。
しかし、追加融資だけを見ていると、次の3つを見落とします。
| 見落とし | 資金繰りへの影響 |
|---|---|
| 営業資金収支の赤字 | 借りた資金が毎月溶ける |
| 返済開始後の元金返済 | 数か月後に資金流出が増える |
| 保証料・利息・諸費用 | 入金額そのものを使える現金と誤認する |
一方、リスケだけを見ても危険です。元金返済が減っても、営業赤字、税金、社会保険料、仕入支払が残っていれば、資金は減り続けます。
つまり、追加融資もリスケも、単独では正解になりません。比較する場所は、金融機関との面談前の資金繰り表です。
まず同じ表に入れる数字
比較表は難しくする必要はありません。最低限、次の数字を月別で並べます。
| 項目 | 追加融資案で見ること | リスケ案で見ること |
|---|---|---|
| 月初現預金 | 融資実行前の手元資金 | 条件変更前の手元資金 |
| 営業資金収支 | 本業で毎月いくら現金が増減するか | 本業で毎月いくら現金が増減するか |
| 借入入金 | 実行月、入金額、使途 | 通常は入金なし |
| 元金返済 | 据置後の返済開始月と金額 | 条件変更後の返済額 |
| 利息・保証料・諸費用 | 入金額から差し引く費用 | 条件変更や計画策定にかかる費用 |
| 月末現預金 | 何か月持つか | 何か月持つか |
見る順番は、支払不能月が消えるか、13週間以内の最低残高がマイナスにならないか、返済再開後も資金が残るか、家族生活費や自宅保全に使う最後の資金を削っていないかです。
説明用の数字で比較する
これは実在案件ではなく、説明用の仮定です。
現預金500万円、営業資金収支が毎月マイナス120万円、既存借入の元金返済が毎月180万円、税金・社会保険料の通常支払が毎月80万円の会社を考えます。対策なしでは、毎月380万円ずつ現金が減ります。
| 案 | 初月の効果 | 4か月目以降の注意点 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 追加融資1,500万円 | 入金で現預金は増える。保証料・諸費用60万円を差し引いて見る | 据置後に新たな元金返済50万円が始まる。営業赤字が残れば再び減る | 改善策が間に合い、返済開始後も資金が残るなら検討余地あり |
| 6か月リスケ | 既存元金返済を180万円から30万円へ圧縮できれば、月150万円の流出を抑える | 入金はない。営業赤字が残れば資金は減る | 改善策を実行する時間を作れるなら検討余地あり |
追加融資は「一時的に現金を増やす施策」です。リスケは「毎月の資金流出を減らす施策」です。性質が違うため、同じ資金繰り表で見なければ比較できません。
追加融資を優先してよい条件
追加融資を優先してよいのは、借りた後に返済できる見通しがある場合です。
使途が赤字補填だけではない
仕入増加、受注対応、回収までのつなぎ、設備修繕など、入金に結びつく使途が説明できる場合は、追加融資の意味があります。
逆に、毎月の営業赤字や既存返済を埋めるだけなら、借入残高が増え、数か月後に同じ問題が戻ります。その場合は、追加融資の前に固定費削減、赤字取引の停止、価格改定、リスケを同じ表に入れるべきです。
返済開始後も最低残高が残る
追加融資は、実行月だけを見ると有利に見えます。問題は返済開始後です。据置期間が終わった後、元金返済が増えても月末現預金が残るか。13週間の最低残高がマイナスにならないか。ここで赤字になるなら、追加融資は資金繰り改善ではなく先送りです。
リスケを早めに検討すべき条件
リスケを早めに検討すべきなのは、追加融資の可否よりも、既存返済が資金繰りを圧迫して改善時間を奪っている場合です。
金融庁は金融機関に対し、資金繰り相談へ丁寧に対応し、条件変更の有無だけで機械的に判断しないよう求めています。また、既往債務の条件変更や借換え等について、事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を継続するよう要請しています。
ただし、これは「相談すれば通る」という意味ではありません。会社側が、資金繰り表、改善策、返済再開の見通しを出せることが前提です。
リスケで作った時間を使う
リスケで元金返済を減らしても、営業資金収支が赤字のままなら、資金は減ります。だから、リスケの目的は「返済を止めること」ではなく、「改善策を実行する時間を作ること」です。
中小企業庁の経営改善支援でも、過去の資金繰り実績を分析し、将来の資金計画を作成する考え方が示されています。リスケを相談するなら、何か月で営業資金収支を戻すのかを同じ表に入れる必要があります。
実務判断:比較するのは審査可能性ではなく、失敗時の残り方
追加融資を申し込む前に、厳しく見ておくべき点があります。それは、追加融資が断られた場合に、何日残るかです。
追加融資を待っている間にも、給与、仕入、税金、社会保険料、家賃、借入返済は出ていきます。審査に時間がかかり、結局断られた時点で資金が尽きていれば、リスケ相談も改善策も遅れます。
| 判断項目 | 見るべき結論 |
|---|---|
| 追加融資が通った場合 | 6か月後に現金が残るか |
| 追加融資が遅れた場合 | 支払不能月までに別策へ切り替えられるか |
| 追加融資が断られた場合 | すぐリスケ、税社保分納、固定費削減へ移れるか |
| リスケした場合 | 営業資金収支改善までの時間を確保できるか |
会社を延命するだけで、家族生活費や自宅を守る余地が消えるなら、その延命は成功とは言えません。金融機関に出す前に、会社の資金繰り表と個人側の最低限守る資金を分けて確認します。
金融機関へ出す資料
追加融資でもリスケでも、口頭説明だけでは足りません。最低限、次の資料を揃えます。
- 直近2期分の決算書
- 最新の試算表
- 借入金一覧表
- 金融機関別の毎月返済額
- 13週間資金繰り表
- 6か月から12か月の月次資金繰り予測
- 税金・社会保険料の未納と分納予定
- 売上、粗利、固定費の改善策
- 追加融資案とリスケ案を並べた比較表
日本政策金融公庫のFAQでも、返済条件の見直しでは、税務申告書、決算書、資金繰り表、経営改善計画書等の資料を求める場合があると説明されています。民間金融機関でも、公庫でも、資料なしの「何とかしてください」では判断されにくいと考えるべきです。
無料相談で確認すること
追加融資を申し込むべきか、先にリスケを相談すべきかは、会社ごとに違います。
無料相談では、追加融資が通った場合と通らなかった場合の資金繰り、リスケで何か月の改善時間が作れるか、会社の延命のために家族生活費や自宅保全の余地を削っていないかを確認します。
結論は、金融機関の顔色ではなく、資金繰り表に出ます。追加融資とリスケを同じ表に入れたうえで、どちらが会社と家族にとって次の選択肢を残すかを判断します。
参考資料
- 金融庁「金融の円滑化に向けた取組及び事業者支援の徹底について」
- 金融庁「中小企業等に対する金融円滑化対策について」
- 中小企業庁「収益力改善支援に関する実務指針」
- 中小企業庁「経営改善計画策定支援」
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」
- 中小企業庁「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)について」
- 日本政策金融公庫「よくあるご質問」
- 日本政策金融公庫「公庫融資借換特例制度」
<この記事の著者・運営者>
事業再生コンサルティング株式会社
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