13週間資金繰り表で最初に見る数字
2026.07.07
目次
結論:最初に見るのは月末残高ではなく、週中最低残高と支払不能週
13週間資金繰り表を作ったら、最初に見る数字は月末残高ではありません。最初に見るべき数字は、各週の途中で一番少なくなる現預金、つまり週中最低残高です。
月末だけ現金が残っていても、給与日、仕入支払日、家賃、税金、社会保険料、借入返済が重なる日に現預金が割れれば、その会社は資金ショートします。損益計算書で黒字に見えても、売掛金の入金前に支払いが先に来れば現金は足りません。
資金繰り改善の初動では、次の3つを先に確定します。
| 最初に見る数字 | 意味 | 判断に使うこと |
|---|---|---|
| 週中最低残高 | その週の途中で一番少なくなる現預金 | 本当に支払いを越えられるか |
| 支払不能週 | 何週目に残高がマイナスになるか | 交渉・削減・資金化の期限 |
| 支払優先順位 | どの支払いを守り、どの支払いを交渉するか | 会社と家族生活を同時に失わないための順番 |
13週間表は、銀行に見せるためだけの資料ではありません。社長が、いつ選択肢を失うのかを先に見るための道具です。
月次資金繰り表だけでは危険な理由
月次表は、月末時点の現預金を把握するには有効です。しかし、資金繰りが詰まっている会社では、月末残高だけでは遅すぎます。
たとえば説明用の仮定です。月初に現預金が800万円あり、月末には売上入金が600万円入る会社があります。一見すると、月末まで持ちそうに見えます。
しかし、第2週に給与220万円と仕入300万円、第3週に家賃・固定費120万円、第4週に借入元金100万円と税金・社会保険料80万円が出るとします。売上入金が第4週の後半なら、月末には残っていても、第2週から第3週に資金が最も薄くなります。
この会社で見るべきなのは「月末にいくら残るか」ではありません。「給与と仕入を払った直後に、いくら残るか」です。
週中最低残高を見る
週中最低残高とは、その週の入出金を日付順に並べたとき、もっとも現預金が少なくなる瞬間の残高です。
月末残高がプラスでも、週中最低残高がマイナスなら支払いは止まります。預金残高が一時的に薄くなる週を見落とすと、支払日直前に慌ててファクタリング、社長借入、支払延期を繰り返すことになります。
支払不能週を見る
次に、何週目に支払不能になるかを見ます。これは「あと何か月持つか」より実務的です。
資金が割れるのが第11週なら、金融機関相談、税務署・年金事務所への相談、支払条件の交渉、在庫処分、固定費削減を第10週に始めても間に合いません。13週間表は、対策の締切を週単位で見せるために作ります。
13週間表に最低限入れる項目
細かい表を作る前に、最低限この項目を入れます。
| 区分 | 入れる内容 | 見落とした場合の危険 |
|---|---|---|
| 売上入金 | 売掛金の回収予定、現金売上、入金遅延見込み | 入金予定を過大に見てショート日を誤る |
| 仕入・外注 | 買掛金、外注費、材料費、支払サイト | 取引継続に必要な支払いを後回しにする |
| 人件費 | 給与、役員報酬、賞与、源泉税 | 従業員離脱や生活費不足につながる |
| 固定費 | 家賃、リース、通信、保険、水道光熱費 | 止めると営業できない費用を軽く見る |
| 税金・社会保険料 | 納付額、滞納額、分納額、今後の発生額 | 差押えや交渉悪化を招く |
| 借入返済 | 元金、利息、保証料、返済日 | 損益に出ない現金流出を見落とす |
| 家族生活費 | 最低生活費、住宅ローン、教育費 | 会社延命で生活防衛資金まで失う |
ここで重要なのは、すべてを正確に当てることではありません。支払いを止めると事業継続や家族生活に重大な影響が出るものを、表から漏らさないことです。
税金・社会保険料を外に出さない
資金繰り表でよくある失敗は、銀行返済だけを入れて、税金や社会保険料を別管理にすることです。
国税には納税の猶予制度があり、事業の著しい損失などの事情により納付困難となった場合に猶予が検討されます。ただし、猶予期間は原則1年を限度に、完納できる最短期間とされます。自動的に支払いを止められる制度ではありません。
厚生年金保険料等にも換価の猶予・納付の猶予があります。日本年金機構は、納付が困難な場合に、要件を満たせば猶予を受けられること、換価の猶予は納期限から6か月以内の申請が必要であることを案内しています。
だからこそ、税金・社会保険料は「あとで考える支払い」ではなく、13週間表の中に入れます。銀行返済だけを止めても、税社保の支払いで資金が割れるなら、資金繰り改善にはなっていません。
支払順位を決める
13週間表を作る目的は、すべての支払いを予定どおり払うことではありません。資金が足りないと分かった時点で、守る支払いと交渉する支払いを分けることです。
支払順位は、次の3軸で決めます。
| 軸 | 優先して確認すること | 例 |
|---|---|---|
| 事業継続 | 止まると売上回収や営業継続ができないか | 給与、主要仕入、家賃、電気、水道、通信 |
| 生活保全 | 社長家族の最低生活を壊さないか | 生活費、住宅ローン、教育費、医療費 |
| 交渉余地 | 事前相談で分納・条件変更の可能性があるか | 税金、社会保険料、借入元金、リース料 |
ここで誤ってはいけないのは、「声が大きい相手」から払うことです。催促が強い支払いを優先し、給与、仕入、税社保、家族生活費を後回しにすると、会社の再生可能性も生活防衛も同時に失います。
銀行返済は損益ではなく資金で見る
借入金の元金返済は、損益計算書の費用には出ません。しかし、現金は確実に減ります。
決算書上は利益が出ていても、元金返済と税金・社会保険料を払うと現金が残らない会社はあります。この場合、「黒字だから大丈夫」ではありません。13週間表では、元金返済日を入れて、その週の最低残高を見ます。
金融庁は、金融機関に対し、事業者の資金繰り相談に丁寧・親身に対応し、決算状況や条件変更の有無だけで機械的に判断しないよう要請しています。また、既往債務の条件変更や借換え等について、迅速かつ柔軟な対応を継続することも求めています。
ただし、これは金融機関が必ず返済猶予を認めるという意味ではありません。会社側が、13週間表、6か月以上の資金繰り予測、改善策、税社保の状況を説明できなければ、交渉は感情論になります。
13週間で資金が割れると分かった時の初動
13週間表で資金が割れる週が見えたら、すぐに次の順番で動きます。
| 順番 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 支払不能週と最低残高を確定する | 何週目までに対策が必要か決める |
| 2 | 支払いを事業継続・生活保全・交渉余地で分ける | 守る支払いと交渉する支払いを分ける |
| 3 | 税金・社会保険料の滞納・今後発生額を入れる | 差押えや想定外の流出を防ぐ |
| 4 | 金融機関別の返済額、担保、保証を整理する | 条件変更相談の準備をする |
| 5 | 個人資金投入の上限を決める | 家族生活を守る線を先に引く |
| 6 | 13週間表とは別に6か月予測を作る | 延命後に営業資金収支が戻るか見る |
中小企業庁の早期経営改善計画策定支援でも、資金繰り管理や経営状況把握に取り組む中小企業が、資金繰り計画、アクションプラン、損益計画、資金繰表を作ることが示されています。自社だけで作れない場合は、認定支援機関などの支援を使う選択肢もあります。
しかし、支援制度を探す前に、自社の支払不能週が見えていなければ判断はできません。先に13週間表で期限を出します。
実務判断:表をきれいにする前に、社長の判断を決める
資金繰り表は、きれいなExcelを作ることが目的ではありません。社長が決めるべきことを前倒しするために作ります。
最初に決めるべきことは、次の3つです。
| 決めること | 決めない場合の危険 |
|---|---|
| 会社へ入れる個人資金の上限 | 会社も家族生活費も同時に失う |
| 守る支払いと交渉する支払い | 催促順に払い、事業継続に必要な支払いが残らない |
| 何週目までに金融機関・税社保へ相談するか | 交渉材料を作る前に資金が尽きる |
会社を救うことは重要です。しかし、最後の判断軸は家族の生活を守れるかです。13週間表で資金が割れる会社ほど、会社の延命だけを見てはいけません。
社長個人の預金を会社へ入れる場合も、上限を決めます。追加で保証や担保を出す可能性がある場合は、専門家と確認します。自宅や家族生活を守る話は、危機が表面化してから慌てて名義や資産を動かす話ではありません。
無料相談で確認する資料
13週間資金繰り表を作っていない、または作ったが見方が分からない場合は、まず支払不能週と週中最低残高を確認します。
相談時には、次の資料があると判断が早くなります。
- 直近2期分の決算書
- 最新の試算表
- 直近6か月の預金通帳
- 売掛金・買掛金の一覧
- 今後13週間の入金予定と支払予定
- 金融機関別の借入残高、返済日、毎月返済額、担保・保証の有無
- 税金・社会保険料の納付状況、滞納・分納状況
- 社長家族の最低生活費と住宅ローン等の固定支出
すべて揃っていなくても相談は可能です。最初に見るのは、資料の完成度ではありません。何週目に資金が割れるか、どの支払いを守るべきかです。
参考資料
- 金融庁「金融の円滑化に向けた取組及び事業者支援の徹底について」
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」
- 国税庁「通常の納税の猶予の要件等」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」
- 中小企業庁「金融一般支援」
<この記事の著者・運営者>
事業再生コンサルティング株式会社
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